平鍋健児氏(永和システムマネジメント副社長兼東京支社長)は,ソフトウエ
ア開発の人間的な側面に焦点を当てたソフトウエア開発現場の運営手法「プロ
ジェクト・ファシリテーション(PF)」の体系化と普及に取り組んでいる。こ
れをご紹介しよう。
「見える化」とは、一目ですべての状態が理解できるように記載されているこ
とだという。このため、プロジェクトの進捗状況をタスク残量で表現するのに
は、「先を見通す視点」があるバーンダウン・チャートと呼ばれるチャートが
最適である。バーンダウン(burn down:燃え落ちる,全焼する)チャートは
、一般的なチャートにありがちな右上がりではなく右下りになっている。チャ
ートを作成する際には、縦軸に残りの作業量を,横軸に時間を割り当てて日々
の残り作業量をプロットしていく。右下、つまり残り作業量がゼロ(=全焼)にな
れば、すべての作業が完了するというわけだ。
しかし、これを単なるExcelのシートにしてしまうと,ほとんどの人が見ないの
で効果が薄いという。
「かんばん」は,作業を「ToDo」「Doing」「Done」に分け,ホワイトボードな
どに張り出す。作業をする開発者が,自発的に自分が処理すべき作業に署名す
るやり方を取り入れている。
「高品質なソフトウエアを作るのに必要なのは,技術,プロセス,人の3要素。
私はこの中で“人”が5割以上重要だと思っている」と強調。その人のモチベー
ションを上げるにはソフトウエア開発は現在,3K(きりがない,帰れない,給料
が安い)と言われている。これを3T(定時で帰れる,楽しい,高い給料)に変え
るしかない。
PFの考え方の指針として五つの原則を挙げた。ここまでに見てきた「見える化
」,人の行動を誘発する「リズム」,概念をとらえやすくするための「名前付
け」,人対人ではなく「問題対私たち」の構図,新しいことをやってみる「カ
イゼン」である。
SEを育てるには、「若干の手助けと,褒めることだけをすればよく,後は自
分で育つ」という。
1.タスクかんばん
タスクかんばんは,チーム全体のタスク・カードをタスクの状態ごとに分類し
て壁に張り付けることで,プロジェクトの進行状況を見える化する手法である
。タスクの状態は,「To Do(未着手)」「Doing(着手)」「Done(完了)」
の3つに分けるのが一般的だ。壁をこれら3つの領域(レーンと呼ぶ)に分け,
それぞれ該当するタスク・カードを張り付けている。
タスク・カードは最初To Doレーンに張っておき,着手(サインアップ)する際
に取り外して自分の席に持っていく。これを「タスクを取る」と呼んでいる。
タスク・カードを付せんで代用するような場合には,タスクを書いた付せんを
自分の席に持っていく代わりに,Doingレーンに移動してもよい。そうすれば「
誰が何に着手しているか」についても一目で分かるようになる。
作業が終わったら,Doneレーンにタスク・カードを移動して完了とし,次の
タスクにサインアップしてタスクを取る。一日の作業終了時に完了していない
タスクがあれば,作業中としてDoingに張っておき,次の日の開始点とする。
タスクの状態を分類する際には,今挙げたTo Do,Doing,Doneの3つ以外に新た
な状態を定義してもかまわない。例えば終了後に誰かのレビューを受けるとい
う状態を定義したい場合は,To Do,Doing,Doneに加えて,「レビュー待ち」
といった状態を追加すればよい。または何らかの理由で「予定していたが今は
作業しない」という状態を定義したければ,「ペンディング」といった状態を
追加することもできる。
タスクかんばんのメリットは,ある期間における全体の作業量と,現時点で完
了済みの量を視覚的に把握できる点だ。今現在の作業状態のスナップショット
を「見える化」するのである。
このようにタスクかんばんによってチーム全員が現在のプロジェクトの状況を
的確に認識できることは,様々な利点をもたらす。どこかで問題が発生した場
合に,チーム・メンバーが自律的なアクションをとりやすい,というのがその
例だ。タスクかんばんがないと,チームの中で互いに誰が何をしているかを把
握することさえ難しいだろう。
2.バーンダウン・チャート
バーンダウン・チャートとタスクかんばんを比べると,残りの作業量が見える
点はどちらも同じである。ただし,バーンダウン・チャートは時間軸を持って
いるために,傾向から今後の見通しを立てられる。また,タスクかんばんはタ
スクという単位で残りの量が見えるのに対し,バーンダウン・チャートはもっ
と簡潔に「残り時間」,つまりあとどれだけ時間をかければ終わるのかが見え
る点もメリットの一つだ。
バーンダウン・チャートは,作業の完了したタスクの実績時間や予実差などは
一切関知しない。言い換えると「過去は一切見ない」ことになる。バーンダウ
ン・チャートで表現したい内容は「期日までに終わるかどうか」である。これ
を知るためには,「タスクにどれだけ時間がかったか」は必要ないという割り
切った思想がその背景にある。必要なのは,「作業が終ったら残時間を0に,仕
掛り中の作業は残りどれくらいかかりそうかを記録し,その合計を日々プロッ
トする」---これだけである。このように残時間だけにフォーカスする進ちょく
管理を「残時間進ちょく」と呼ぶことにする
「見える化」ソフトウエア開発手法